当研究室では10ナノメートル以下のスケールの金属/半導体の微粒子を主に研究しています。この程度まで物質を小さくすると電子が狭い空間に閉じ込められるため、サイズに特有の性質(サイズ効果)が顕著に観測されるようになります。そのためサイズの変化とともに光学特性にも大きな変化が現れます。新しいナノ粒子を化学的に合成しサイズ/構造/組成を制御したり、それらを組み合わせたり集積して、高い光機能性をもった材料の開発を目指しています。光機能性のメカニズムを明らかにし材料の特性を向上させるため、色々な分光実験をおこない謎解きを進めていきます。
バルクと異なる性質が顕著に現れるナノスケールの物質系の光物性と電子物性についての基礎研究をおこなっています。特に光に対して特徴のある性質を示す物質が主な研究対象です。このような物質の材料応用には、LED・レーザーなどの高効率発光素子、太陽電池、蛍光体、環境浄化や太陽光エネルギー変換のための光触媒、光通信・光情報処理デバイスなど、これからの地球環境問題の解決に役立つ用途がたくさんあります。物質の光学特性は電子状態を反映しています。そのためナノ構造制御により電子状態を操作して、光学特性を変化させることができます。逆に光をプローブとして使うと、物質の電子状態を知ることができます。光物性物理とはこのような光と物質の関わりを研究する学問分野です。
現在、様々な光デバイス材料は、主に半導体の微細加工技術を駆使したナノレベルの構造制御により作られています。ナノ材料をもっと簡便な方法で大量に作ることができれば、省エネルギー、省資源の観点からも有益です。そこで当研究室では、フラスコの中でおこなう液相還元プロセスを利用してナノ粒子を合成しています。この方法では、温度や反応時間を調整すると、望みのサイズ・形状の金属や半導体のコロイド状ナノ粒子を得ることができます。半導体と金属を組み合わせた複合構造のナノ粒子も合成することができます。また、ナノ粒子を原子のような構造単位として配列・集積すると、新奇な人工結晶を作り出すことができます。
従来から研究がおこなわれてきた半導体ナノ粒子には、有害性の高い重金属元素が多く使われています。これは環境保全の観点から問題であると考えています。当研究室では、従来のナノ半導体材料を代替する環境負荷が低く安価な元素を用いた、高機能でクリーンなナノ材料の研究をおこなっています。このようなナノ材料を化学的に合成する方法の開発と、光物性物理学をベースとした光機能の詳しい分析結果に基づいた、安全安価でかつ高機能なナノ光デバイス材料の開発が目標です。